《GUILLOTINE1259<ギロチンシャー>》1994
サイズ可変

 

黒く鈍い光を放つ鉄の断片の数々。

JR神戸駅の高架下にあった倉庫を会場として発表された作品である。
大型鉄屑処理に用いられる1250tの鉄の切断機ギロチンを操縦して、厚さ約80mmの鉄を切断。会場には、約50t分もの鋼材が運び込まれた。その多くは、当時建設中であった明石海峡大橋に使用された足場だったという。会場となった倉庫は、当時すでに使用されておらず、天井高約7m、広さ2800m2のがらんとした空間であった。ここでの展示を切望した榎は、JR西日本の社長へ直接交渉。運よく、JR神戸駅東海道線・大阪駅〜神戸駅間開業120周年ということで、快諾を得ることができた。

実際、作品に使用された厚さ約80mmの鉄を切断するには、鉄を無理やりねじ伏せ、裂くような形になるのだという。本作品で、榎はその鉄の切り口に表れる何ともいえないエネルギー、鉄の持つ存在感を、目で見るだけでなく身体で感じさせたかったと語っている。展示空間として整備されていない場所での展示のため、作品設営にいたるまでの電気設備から床面・天井の整備、安全対策が慎重に行われたという。

ひとつの彫刻作品としてではなく、展示された空間をまるごと作品としてしまう榎の表現に対する考え方が表れた作品である。