《ハンガリー国に半刈り(ハンガリ)で行く》1977

体毛の半分を剃り落とし、ハンガリーに入国。
全身の体毛の半分をすべて剃り落とす「半刈り」で神戸・三宮の街中を歩くパ
フォーマンスを行い、周囲の人々を驚かせる。同年、1977年に『ハンガリー国
に半刈り(ハンガリ)で行く』というプロジェクトでハンガリーのデブレッツ
ェンへ向かう。途中、ドイツのカッセルでは「ドクメンタ6(*)」にパフォーマンスで突如参加。西ベルリンから電車でのチェコ入国を拒否され、空路でハ
ンガリーに入る。観光客や一般人の入国が困難な時代ではあったが、当時ハン
ガリー大学の客員教授であった知人からの招待状を持っていたおかげで無事入
国することができた。しかし、その奇抜な容姿から、常に警戒されたり、パス
ポートの写真と実際の顔が違って見えたりと話題の多い旅であった。「半刈り」をしている間も榎は会社員として働き、日常生活を送っていたという。

髪の毛は、日常や生活の表面的なもののひとつでもあり、時間の経過につれて
自分の意志とは関係なく生えてくるおもしろさに榎は興味を持っていた。半分
剃ることで、実際に左右の体のバランスが異なり、体毛の存在意味を具体的に
感じたと言う。

榎作品の中でも最もシンボリックなもので、日本の美術界では伝説的な作品。


*ドクメンタ
ドイツ連邦共和国中央部、ヘッセン州の小さな古都カッセルで1955年以来、
5年おきに開催されている現代美術の大規模な国際グループ展。