《裸のハプニング》1970

 

体に万博のシンボルマークを焼きつけ、街頭に現れる。

大阪で日本万国博覧会が開催された1970年、8月2日に日本で初めての歩行者天国が六大都市で一斉に実施された。その当日、榎は、腹部と背中に直径約15cmの万博マークの日焼けの跡をつけ、白いふんどし姿で東京・銀座の歩行者天国を歩くというハプニングを行った。しかし、当時は学生運動が盛んだったため警察の取り締まりが厳しく、10分も経たないうちに騒乱罪で逮捕された。

公害問題への配慮を理由に歩行者天国ができたその一方で、万博のために買収された田んぼの真ん中に突如現れた宣伝用の万博マークを目にした榎は、企業や国が参加する大規模で得体の知れない「祭り」に対して違和感を覚えたという。人間にとって「祭り」とは何かという疑問を抱き、自然と共にあるべき「祭り」本来のあり方を自分に植えつけるため、4月から4ヵ月間、毎日30分間太陽の光を浴びて自身の体に直接、万博マークを焼きつけたのだった。銀座でのハプニングの後、一躍有名になった榎は、当時としては珍しかった缶コーヒーの雑誌広告でモデル出演を行ったこともある。

それまで絵画を中心に制作をしてきた榎が、今までとは異なる「行為」という手法にまで、表現の幅を広げるきっかけとなった作品。